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岡見勇信 - サンダー、7つの戦い

 1113日、ドイツのオーバーハウゼンで行われるUFC 122でネイサン・マーコートと対戦する岡見勇信はこれが3年ぶりのメイン・イベントへの復帰となる。”サンダー”と呼ばれる岡見にとって、これは長らく期待されてきたミドル級タイトルへの挑戦権を獲得する為の、そして決定的瞬間が加えられる一戦となるだろう。 

 
アンデウソン・シウバ WDQ1 – Rumble on The Rock 8 – 2006年1月8
それまでの敗北は経験豊富なベテラン、アマール・スロエフとファラニコ・ヴィタレに喫した2敗のみ、という13勝2敗のレコードを誇る岡見の二度目のアメリカでの登場はハワイで全盛期を迎える前のアンデウソン・シウバとの対戦だった。シウバはPRIDEへの参戦によって国際的に多少の知名度こそあったものの、3勝2敗と言う彼のPRIDEでの戦績は2006年6月に彼がUFCへ参戦するまで”ザ・スパイダー”と言う選手の本当の姿を表したものではなかった。ホノルルでのこの晩の試合では、シウバのスタンドの攻防での支配力と岡見のテイクダウンをやり過ごすようすから、このブラジル人選手が優位に試合を進めるかに思われた。
岡見は最終的にシウバをマットに寝かせた。ところが”サンダー”の逆襲が始まるか、とまさに試合が熱を帯び始めた瞬間、シウバはこの試合を下からの蹴り上げで終わらせてしまった。シウバにとって不幸だったことは、蹴り上げは反則行為であり、彼はレフリー、トロイ・マンダロニス(後のUFCファイターの一人となる)によって失格とされてしまった。記録上はこれがシウバの最後の敗北であるが、岡見はそのようには受け止めてはいない。「記録は自分の勝ちですけど、自分の完敗でした。」と岡見は発言している。「ですがこの試合により自分は一層強くなったと信じています。次にアンデウソンと戦うときは違った展開になると思います。それには自信があります。」

アラン・ベルチャー W3 – UFC 62 – 2006年8月26
シウバ戦での勝利の3ヵ月後、岡見は再びハワイにジェイク・シールズと戦い、この試合はマジョリティ判定で敗れている。この敗北の後、一年以上無敗を守った岡見は日本で二つのTKO勝利を挙げ、かつてミドル級タイトル挑戦経験のあるデイヴィッド・テレルの代役となる、同じくUFCデビュー戦であったアラン・ベルチャーを相手にひっそりとUFCデビューを迎えた。その試合での最大の見せ場は3ラウンドのバックポジションをがっちりと獲っている岡見に対するベルチャーの珍しいフロント・フリップであったが、それ以外の全ての見せ場は岡見によるもので、ほとんど職人的にパウンドを落とし続け、3-0の判定で自身のUFCへの参戦を宣言した。

マイク・スウィック W3 – UFC 69 – 200747
5勝0敗というUFC戦績でアルティメット・ファイター出身のマイク・スウィックはミドル級のタイトル挑戦へ急速に近づいていた。そして地元テキサスのファンの眼前で行われたUFC 69での試合は多くがスウィックがその戦績を6勝0敗とするものと予想していた。しかし岡見は落ち着き、試合への準備は万全で、彼はまさにその通りの試合に試合をすすめ、スウィックをマットの上で支配し、3ラウンドにわたるグラウンド&パウンドで明確な判定勝利を勝ち取った。神奈川出身の岡見はこれで(ベルチャー、カリブ・スターンズ、ローリー・シンガーに続く)4試合連続勝利、その対戦相手にオクタゴンで初となる敗北を刻ませた。

リッチ・フランクリン L3 – UFC 72 – 2007616
UFC 72でリッチ・フランクリンと対戦を予定していたマーティン・カンプマンの欠場が決定したとき、アンデウソン・シウバの保持するタイトルへの挑戦権を決定するために、元185ポンドの王者の対戦相手として理論的な選択肢は目下UFC4連勝中の岡見であった。岡見にとって不幸なことに、彼の辛抱強いスタイルは最初の2ラウンドのジャッジの判定をフランクリンに2-0でリードを許すこととなった。しかし3ラウンドに入ると岡見はフランクリンをキムラで極めかけるなどグラウンドの攻防で猛追し、すでに彼は階級の最高の選手とも戦う準備が出来ていることを見せた。「あれはちょっとヤバかった。嫌な感じだったけどうまく引き抜くことができたよ。」3-0の判定で勝利し、岡見を再び順番待ちの列に送り返したフランクリンは語った。

エヴァン・タナー KO2 – UFC 82 – 200831
フランクリンの敗北の4ヵ月後、岡見はジェイソン・マクドナルドに3ラウンドの判定で勝利、しかしオクタゴンでの5勝1敗と言う素晴らしい戦績にもかかわらず、ファンはUFC 64でのスターンズ戦が唯一のTKOとなる”サンダー”からもっとイカヅチのような激しさを欲していた。それに対する岡見の答えは…?UFC 82で復帰した元185ポンド級のチャンピオン、エヴァン・タナーを相手に2ラウンド、目の覚めるようなノックアウトであった。それは岡見のUFCでもっとも印象的なパフォーマンスで1ラウンドにはタナーの腰を落とし、血まみれにし、そして2ラウンドに顔面への膝蹴りでとどめを刺したのだ。試合の後、シウバとの再戦に関して訊ねられると、物腰が柔らかい岡見はいつものように控えめに答えた。「UFC次第です。」岡見は続けた。「もし彼らが自分がそれにふさわしいと感じるなら、それは光栄です。もし彼らがベルトの挑戦の前に他の強豪と戦うことを望むのであれば、自分はその通りにします。」

ルシオ・リニャレス TKO2 – UFC Fight Night – 2010331
タナー戦の後、岡見はディーン・リスターに勝利し、そしてチェーる・ソネンに敗北した。ソネン戦での敗北の後、タイトル・コンテンションに割って入るには連勝を重ねるだけでなく、印象的な形で勝利を重ねなくてはならないことに気づいた。2010年3月、岡見はこの年初めての相手、典型的なブラジル人選手、ルシオ・リニャレスと対戦し、最高の出来栄えのスタンドの攻撃で圧倒し2ラウンドにレフリーストップを呼び込んだ。この勝利はこの階級のほかの選手たちに岡見の危険な武器はグラウンド&パウンドだけでなく、スタンドでも相手をフィニッシュできると言う事実を突きつけた。

マーク・ムニョス W3 – UFC on Versus – 201081
UFCでの日本人の希望となった岡見はそのプレッシャーに押しつぶされてもおかしくはなかった。しかし同国の五味隆典がタイソン・グリフィンを1ラウンドでノックアウトしてその復活を遂げた同じ晩に、29歳の若者はマーク・ムニョスを3ラウンドのスプリット判定で下し、ゆっくりとしかし確実にその階級の頂点へと足を進めた。勝利そのものの重要性もさることながら、なによりも岡見はほんの1年足らず前にチェール・ソネンでの失敗を繰り返さず、世界レベルのレスラーに対処できると言うことを証明したのであった。そしてこの一連の勝利により岡見はマーコートの待つタイトル挑戦者決定戦へこぎつけた。そして今回、全てがうまく行けば、岡見は(近藤有希、宇野薫、桜井”マッハ”速人、山本喧一に次ぐ)の5番目のUFCのタイトルに挑戦する日本人となることになる。